笛吹きたち会員

第37回青山フルートインスティテュート発表会


テーマ「あわせる」

「笛吹きたち」37号文学賞

第1席、諸戸孝明さんさん、第2席は同点で田頭ゆかりさんと小野宏子さんが授与されました。

「いきの上」賞

山口和克さんが授与されました。


第1席

笛吹たち三十七号文学賞
第一席
諸戸 孝明様
「お師匠さんのお言葉」
 諸戸さん!またまた第1席です。毎年のようにこの席を独り占めですね。
今回はレッスン時の師匠の言葉を集め組曲形式でまとめました。師匠の尊い言葉をよくよく玩味してこのように洒脱な文章にまとめる才能は高く評価されなければなりません。文中には流れるリズムがあります。歯切れ良さがあります。エスプリがあります。おまけのコーダを置く構成も抜群です。これが音楽に反映されたらと思わずにはいられません。
 今年のある日のレッスンで貴方はこうおっしゃいました。「最近フルートを吹くことが楽しくなくなりました。昔はもっと自由に、思い通りに、気持ちよく吹けたのです」。
これは師匠に大きなショックを与えました。その理由を伺ったところ「毎回注意されるリズムの足かせが原因です。これに気を取られていると吹く喜びが損なわれてしまうのです」。「う~ん」。(師匠のうめき声です)
 それ以来貴方は「レッスンでは1個所だけ注意してください」と命じられました。「う~ん」。(師匠のうめき声です)
 いつの日か「最近フルートを吹くことが楽しくなりました。昔はかなり自由に、かなり思い通りに、かなり気持ちよく吹いていたのですが」というお言葉が聞ける日を楽しみにしています。
 よってここに賞します。

 平成二十年十一月三日
 師匠こと 石原 利矩
 笛吹たちの会一同


第2席

笛吹たち三十七号文学賞
第二席
田頭 ゆかり様
「一人旅・二人旅・一人と一匹旅」
 文学賞、調子が上がってきましたね。思い返せば昨年はやっとやっと勝ち得た初めての入賞が第三席でした。今年は第二席に選ばれました。この調子では来年はどうなるものやら---楽しみです。
 題名の「一人旅」はご長女のことで、「二人旅」はお母さんと次女さんのことで、「一人と一匹旅」というのはご主人とカメのこととは良く読まないと分かりませんでした。夏休みのご家族の里帰りの話を、母親のいくぶん覚めた目と暖かい愛情を併せ持った軽妙なタッチで描いたものでした。あなたのご家族の描写はお嬢様たちの成長ぶりと同時に隅に追いやられつつあるご主人の立場が浮き彫りになっていて、正に田頭家の歴史に残る記録として貴いものとなっています。
 文学賞の上位入賞と同様、フルート演奏も更に上を目指してがんばってください。
 よってここに賞します。

 平成二十年十一月三日
 師匠こと 石原 利矩
 笛吹たちの会一同


第2席

笛吹たち三十七号文学賞
第二席
小野 宏子様
「音楽と、仕事のこころ」
 とうとう文学賞を勝ち得ました。あなたの「音楽と、仕事のこころ」は4日間に経験した出来事を順を追って丁寧に記述しただけでなく、あなたが全てのことを善意で受け止めていることが印象深く、またそれが読者に感銘を与えたに違いありません。駅の売店のおばさん、お寺のコンサート、レッスン受講、三保の海岸、ヤマハ楽器製作過程探訪、切符売りのおじさん、トーケ先生の抹茶注文など細かい観察を詳細な筆致で描き読者を飽きさせませんでした。文中のトーケ先生のインスピレーションはその後、師匠に献呈された「瀧・ファンタジー」に生かされたようです。
 プロの仕事ぶりを通してあなたの学んだことは意義深いものとなったことでしょう。
 フルート演奏においてもあなたの音楽に対する真摯な姿勢は良く現れています。今後もいろいろなことを経験されて益々成長されることを期待しています。
 よってここに表します。
 平成二十年十一月三日
 師匠こと 石原 利矩
 笛吹たちの会一同


いきの上賞
いきの上賞
山口 和克様
 苦節三十年の長い年月をかけてとうとう「いきのうえ賞」に到達されました。フルートを愛してやまず、常に研鑽努力を惜しまず、月謝も惜しまず、よく吹き続けました。
 師匠があなたのお宅に電話をかけると奥様が出られ、そのたびに遠くでフルートの音が受話器を通して聞こえます。フルートの音がやみしばらくするとあなたの声が聞こえてきます。奥様は「フルートは主人の生き甲斐です」とおっしゃっていました。
 手術によって肺活量がずっと少なくなってしまわれたことはフルートを吹くもあなたにとって一大事です。今まで楽に続いていたフレーズが一息でできない現実を体験されどんなに口惜しく思われたかを想像すると師匠も涙を禁じ得ません。にもかかわらず続けてフルートに邁進されているお姿を見ると今度はうれし涙を禁じ得ません。
 「息害」とならず「生き甲斐」となっているフルートをいつまでも続けられることを祈っています。
 あなたの「いきの上賞」は「息の上賞」と言ってもよいでしょう。
 よってここに表します。
 
平成二十年十一月三日
師匠こと 石原 利矩
笛吹たちの会一同